夢の欠片



父に書いてもらった地図を頼りに、私は自分の家からそう遠くない場所に立っていた。


翔吾の家からは一駅くらいの距離にそのマンションはそびえ建っている。


父のこじんまりとしたマンションとは違う、15階くらいはありそうな高層マンションだった。


私……こんなとこに住んでたんだな……


なんとなく不思議な感覚に陥る。


自分の今までの生活は、どう見ても裕福とは言えないものだった。


だから自分に似つかわしくないこのマンションに、昔とはいえ住んでたことがあるんだという事実が、もしかしたら夢なんじゃないかと思えてくる。


それと同時にここが高そうな分譲マンションであることが、引っ越しているかもしれない可能性を低くしていた。


だけどここからが問題だ。


なぜなら父が託してくれた地図には、マンションの場所は示してあったけれど、何号室なのかまではわかっていなかったから……


こんなに立派なマンションてことは、きっとオートロックに違いない。


ポストに書いてある名前を探すなんてことも、きっと出来ないだろう。


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