夢の欠片
ゆっくりと母との距離が縮まっていくのを感じて、少しだけ穏やかな気持ちになるのがわかった。


私が家を出たことは、私だけじゃなく母にも大きな影響を与えていたんだろう。


中田の父や、健のこともそのうち話してみたいと思ってはいるけど、今はまだ少しずつ、何年も穴だらけだった親子関係を埋めていければいいと思っていた。


私がどんなに寂しくて、辛い思いをしたのかを伝えた時、「そんなつもりじゃなかった」と言って母は私にすがって泣き崩れた。


それでも私は、母のせいで学校でいじめられたことも、家に居場所がなかったことも、自ら命を絶とうとしたことも、そして……伊丹から受けたいらやしい視線のことも、全て残らずぶちまけた。


それを聞いた母が、泣くのも忘れて、驚いたように私を見つめていた顔が今でも忘れられない。


深く傷ついたような悲しい目で私を見つめていたの母の顔を……


震える声で涙を堪えながら、今までとは違う母の声で私に謝ってくれた。


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