夢の欠片
――気持ち悪っ!


それがその男に対する第一印象だった。


今までで一番最悪かも……


これまでも3人目の父親が出ていってから、何度か男を連れ込んでいたこともあったけど、まだましだったように思う。


ギラギラした中年特有の臭いや、ねっとりとしたいやらしい視線……


娘との初めての対面だというのに、まるで自分の方がこの家の主だとでも言わんばかりの態度が、私は気に入らなかった。


プロポーズ……


あの様子だとそれを受け入れることは間違いないだろう。


私の意見を聞くふりをしながら、結局……母は自分の意思で全部決めてきたんだから……


あの人が何しようがどうでもいいと思ってたけど……


あの男と一緒に暮らすのだけは我慢できない。


ドサッとベッドに腰かけると、これからのことを思って胸が痛くなった。


向こうの部屋から二人の話し声がボソボソと聞こえてくる。


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