夢の欠片
そう思いながら睨み付けると、伊丹はいやらしい笑みを浮かべて、私の体を上から下まで舐めるように見つめてくる。


じりじりと後ずさりながら警戒していると、伊丹は何事もなかったかのようにフフンと鼻を鳴らして、「お帰り」と言いながら居間へと戻っていった。


去り際に伊丹が何か呟くのが聞こえてブルッと寒気が襲う。


その言葉が耳から離れなくて気持ちが悪くなった。


バスタオルを体に巻き付け、急いで自分の部屋に戻る。


『最近の中学生は発育がいいなぁ……』


確かに、そう聞こえた。


足が、ガクガク震えて、自分の部屋に入った途端、ペタリとその場にしゃがみこんだ。


いつから……どこまで見ていたんだろう?


考えただけで鳥肌が立った。


今この瞬間に、私と伊丹の二人だけしか家にいないことに恐怖を感じる。


お母さん!早く帰ってきて!!


祈るように、いつもなら顔も見たくないはずの母を思う。


やっぱりあいつ、変だよ……


まだ濡れている体にはお構いなしにベッドに潜り込むと、そのまま布団を被って赤ちゃんのように体を丸めた。


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