紅蓮の鬼外伝


そしてそんな淋を放っておいて、俺は漫画を片手に持ち、男のセリフを言う。


「……楓太、おまえ一体何がしたいんだ」


呆れたように淋が半目になかって冷めた口調で言った。


まぁ、こんなのオペラとかの練習だと思ってやればいいんだよ、多分。


オペラなんて見るばっかでやったことねーけど。


「とりあえず、淋の泣き顔が見たい」


だけど、この漫画の中にあるセリフを言ってみたいのが一番かな。


そして俺の今の顔、たぶんこんな顔。


(`・ω´・)+キラッ


うん、自信持って言えるわ。


「…………………」


淋の顔には、『開いた口が塞がらない』と大きく書かれていた。


「はい、ここのシーンは泣きそうな顔して」


そんな淋を華麗にスルーして科白を言う。


「『もう俺には君しか残ってないんだッ』」


淋がやってくれるとは限らないけど、それでもちょっと言ってみたかったこの科白。


まぁ、なんか女々しいのは気にしない気にしない。


そして俺が満足してトクイにしている時、淋が口を開けた。


「『また浮気したら承知しないんだからっ』」


「!!?」


淋がウルウルした目を俺に向けて、女特有の高い声を発する。


――うお、マジでやってくれんの!!?


淋がノッてくるとは思ってなかったので、少し嬉しい。


「『聞いてるの?』」


淋が女らしく首をかしげる。


――うわ、スッゴいウルウル光線!!!


目からビーム出てんじゃん!!!


そして彼女は俺の方に寄ってきて俺を見上げる。


――おぅふ!


頭の中で試合終了のゴングが鳴った。


――な、なに今の


すっごい可愛かった!


心臓がバクバクいう。


――これが俗に言う上目遣いか!!!


何あれ目茶苦茶な破壊力じゃん!!!


「『もうどこにも行かないから…』」


俺は淋を抱きしめて耳打ちする。


「からの、ふぇえーって泣く!」


「ふぇ……ってアホか!」


「ノリツッコミ!!?」


淋がまさかのノリツッコミをした。


淋がノリツッコミをした。


やべえ今日、この世界滅びるのかもしれない。




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