紅蓮の鬼外伝
序:子供
*****


「ずっとそこにいるのですか?」


梅の木の上でウトウトとしている時に、幼い女の声が聞こえた。


俺は空木(うつぎ)。


数え年で百二だ。


人間だったら、もう死んでいる歳らしい。


人間っていうのは、容姿は俺らと似ているけど、ほとんどが心も顔も汚い生き物。


でも中には、当てはまらない者もいる。


まぁ…人間なんて見たことないから、これ全部、伝聞なんだけど。


それはさて置き。


いつものように木に登って、なんとなく景色を眺めていたら、いつの間にか寝てしまったようだ。


俺は寝惚け眼で、声がした方をを見る。


木の下に、珍しいものを見るような目をして俺を見上げている幼い女がいた。


目が合った彼女は、不思議そうに首を傾げる。


見たことがない顔だ。


それに、ここにこんな幼い女がいるのも珍しい。


ここ。


里から離れた人気のない場所。


それはそうと、俺より下の子供がいるなんて知らなかった。



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