モカブラウンの鍵【完結】
モカブラウン色のテディベアのキーホルダーにも、黒いポメラニアンのキーホルダーにも、同じ鍵が付いている。

とりあえずは、俺の父親の単身赴任が終わるまでは、あのマンションに住むことにした。

父さんが帰ってきたら、どこかアパートでも借りようかと思う。



過ちのない夜を過ごした俺たちの結末は結婚だった。

あの酔っ払っている佐伯さんに恋をするとは思わなかった。

気がつけば恋をし、奈央美と呼び捨てにするようになった。

今では『妻』と言うようになっている。



テディベアのキーホルダーを見つめた。

部屋の窓から白樺を眺める奈央美の横顔を見つめる。

モカブラウン色のテディベアと奈央美が同じように微笑んでいた。


「奈央美」

「何?」


振り向いた奈央美の顔に影ができる。

その影の色はモカブラウン。

俺の手の中にあるキーホルダーと瓜二つになった。

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