復讐なんかじゃない
運命
外の寒さが嘘のように、そこは1年中同じ空気が漂っている。



私はいつものように窓際にある「学習室」へと向かう。


冬休みなせいもあって、席は学生たちで埋まっていた。




学習室を一回りしてから、雑誌コーナーで1冊手に取り、傍にあるソファーに座った。

パラパラと数ページめくったところで、強烈な眠気が襲ってくる





「今日は来ないのかと思ってた」

「そうね、どうしようか迷ったわ」

「でも、来たんだね」



私の頭を眺めていた彼はフッと笑って横に座った。
互いの顔を見ることなく窓の外を眺める。




戸惑いがちに彼は私の手をそっと握った。
私は驚くことなく雑誌から目を離さない。





パラリパラリ


ページをめくる音だけのゆったりとした時間が流れている







不意に視界が暗くなり、チュッと小さな音が鳴った


「いつも突然なのね」



再び明るくなった視界。
ゆっくりと隣に座る彼を見る。



「まいったな」と照れている顔は、純粋そのものでこっちがくすぐったい気分になる





「ね、その先へは進まないの?」

「えっ?」


いつまでもその純粋さに触れていると、私まで真っ白に染まってしまいそうだから、彼のペースには、合わせてあげられない。








私には、晃という婚約者がいる
付き合って3年、先月プロ―ポーズされこの正月にはご両親への挨拶をしに行くことになっている。



私の両親には一足早く先週挨拶を済ませた。

両親は、『高校教師』という肩書で晃を気に入ってくれた。





この図書館は、晃の学校の近くにある。
熱血教師の晃が突然デートに遅れるコトもしばしば


いつも待たされる私が見つけた暇潰し場所





隣の彼とのきっかけは何だったのかもう思い出せない。

学習室に通う優等生の彼と他愛もない会話を交わすようになり、彼からの好意はすぐに感じた




まっすぐに向けられる好意は眩しかった。

そんな眩しさを、汚してはいけないと思った時期もあった



だけど――


晃は、浮気をした。
正確に言うと、私が浮気だったのかも知れない。

彼女の方が私よりずっと先に結ばれていたのだから


彼女に家庭があって結婚ができないらしい。
だから、当てつけに私と結婚をする気になったのだろうか


私が全てを知っているとは知らずに晃は今日も彼女との逢瀬を楽しんでいる

私の隣にいる彼が、自分の教え子だという事も知らずに……





彼が学校で最も期待されている優等生だと自慢げに教えてくれた晃の顔がよぎる。



今、私の手の中に二人の男の運命があると思えるだけで、私はこの人生で一番の興奮を感じてる。
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