臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
耳元にフゥーと気持ち悪い温風がかかった。


「キャッ!」


手の主は麻由子の耳に息を吹きかけきた。

さすがに「誰?」と振り向く。その人物を見て、眉間に深く皺を寄せた。


「楠本くん…、ちょっとやめてよ」


楠本修司(くすもとしゅうじ)。航平と同じ営業課に所属していて、麻由子と千尋の同期である。


「俺が呼んでいるのに、無視するからだよ」


ニヤリと笑う。


「無視したわけじゃないから」

「お前、毎日毎日飽きもしないでさ、ほんとストーカーみたいだよな」


麻由子が毎日、航平を見ていることを知っていた。そして、なぜ見ているかも知っている。千尋とこの楠本だけが麻由子のひたむきな恋心を知っている。


「でもさ、見ているだけじゃ進展しないぞ。よし、俺が協力してやるよ}


楠本も千尋と同じで見ているだけではダメだと言う。
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