恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



やがて爪の長さを揃え終ると、ハンドローションを手に出し、マッサージを始めた。

花澄は初めは緊張した面持ちで椅子に座っていたが、やがて自分の意識がボーッとしてくるのを感じた。

学校帰りで疲れてるせいだろうか、なんだかとても気持ちいい。

手をマッサージされるのって気持ちいいんだ、と思いながら、花澄は以前環にハンドクリームを塗ってもらったことを思い出した。

あの時はこんな風に『気持ちいいな~』とは思わなかった気がする。

むしろ緊張でそれどころではなかったというか。

――――環の大きな、少し節ばった手。

花澄の手を包んだ、温かいぬくもり。


「…………」


今思い出すと、なぜか気恥ずかしい。

……なぜだろう。

昔は手を握るなんて日常茶飯事で、それどころか一緒にお風呂に入ったりしたこともあったのに。

今は手を握ることすら、ひどく特別なことになってしまったような気がする。

そう思うのは、自分だけなのだろうか……。



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