恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



その日の午後。

花澄と環は西伊豆にある月杜家の別荘を訪れていた。

月杜家の別荘は西伊豆の山間部の高台にあり、門をくぐると両脇に手入れされたロックガーデンが広がっている。

さらに奥に進むと建物へと続くアプローチがあり、白煉瓦でできたスパニッシュ風の建物が奥から姿を現す。

藤堂家の建物は比較的和風のものが多いが、月杜家の建物はほとんどが洋風だ。

玄関ロータリーに到着した花澄たちのもとに、雪也が玄関の方から歩み寄ってきた。


「いらっしゃい、花澄ちゃん」

「こんにちは。お世話になります」

「環も、わざわざ済まないな。おばあ様が君のコーヒーを強くご所望でね。毎度のことではあるけど」

「有難いことでございます。微力ながら、精一杯務めさせていただきます」


環は車のトランクから荷物を下ろしながら、にこやかに言った。

環はこれから3日間、藤堂家の執事ではなく、サーヴァント兼バリスタとしてこの別荘で働くこととなる。

なので屋敷を出た時から白シャツに黒タイ、黒ベストといった執事服を身に着けており、その姿は思わず見入ってしまうほど格好いい。


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