恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



『お嬢様は、……私の、お嬢様です』


環のあの言葉がなぜか胸に何度も蘇る。

そう、環は自分をとても大事にしてくれている。

主としてだけれど、……それでも、嬉しい。


この優しさに慣れてしまったら……。

環がいなくなった時、自分はどうなってしまうのだろう。

環は恐らく大学に入ると同時にあの屋敷を出て行くだろう。

そして花澄は今のところ近隣の女子大を受ける予定だ。

将来が決まってないので、潰しが効くようにという後ろ向きな選択の結果であるが。


あと半年もすれば、二人の道は分かれてしまう。

そうなったら、自分は……。


大事にされればされるほど不安が大きくなる。

花澄は考えを振り切るように顔を上げ、環の案内で会場へと向かった。



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