恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



最初は、『こうなりたい』という憧れだった。

雪也のように、優しくしなやかな心を持ちたい。

……そう、思っていた。

けれどいつしか雪也の傍に居たいと思うようになり……。

この惹かれる気持ちは――――きっと、恋なのだろう。


「……どうしたの、花澄ちゃん?」


無言の花澄を、雪也は心配そうに覗き込む。

花澄は慌てて顔を上げ、笑った。


「ごめん、なんでもないよ」

「さすがに疲れたかな? 今日はけっこう歩き回ったしね。……あ、そうだ」


雪也はふとコンビニの前で足を止めた。

ちょっと待ってて、と言い残して店内へと入っていく。

花澄は自転車を止めて、コンビニの駐車場で雪也を待っていた。

やがて雪也がビニール袋と紙カップのようなものを手に店から出てくる。



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