恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



重い足取りで歩きはじめた知奈に続き、花澄も歩き出した。

知奈は文芸部に所属しており、火曜と木曜が活動日だ。

そして花澄は生徒会に所属しているのだが、不定期のため活動日は特に決まっていない。

生徒会といっても庶務担当のため普段はあまりすることがなく、忙しいのは文化祭や体育祭の前くらいだ。

二人は鞄を取るべく、北校舎2Fにある3年D組の教室に向かった。

そして、花澄が入口のドアに手を掛けようとした、その瞬間。


「……私、相沢君が好きなのっ!」


中から響いた声に、花澄は目を見開いた。

こっそりと、ドアのガラス越しに中を覗くと……。

見覚えのある二人が、窓際で向かい合っていた。

女子生徒の方は隣のクラスの島田さんだ。

可愛らしい顔つきの、小動物のような雰囲気の子だ。

そして、島田さんの向かいに立っているのは……。


「……環?」


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