恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



「一週間、待つ。一週間後までに返事を聞かせてほしい」

「……っ……」


固まった花澄の手を、環は無言でそっと取った。

そのまま頬を寄せ、手の甲に静かに口づける。

……柔らかい、その感触。

息を飲んだ花澄に、環は目を細めて笑った。


人を誘い込むような、清冽で艶やかな榛色の瞳。

魂を持って行かれる、その瞳……。


「……おやすみ、花澄」


環は花澄の手を放し、踵を返した。

そのまま離れに続く渡り廊下の方へと歩いていく。

花澄はその背を見つめながら、ふらりと柱に寄りかかった。

そのまま脱力し、柱に凭れ掛かったままずるずると床に座り込む。


……胸がいっぱいで、何も考えられない。


視界の先で曼珠沙華の赤い花が夜風にゆらゆらと揺れている。

花澄は魂が抜けた顔で、その光景をぼんやりと見つめていた……。


< 302 / 476 >

この作品をシェア

pagetop