恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



花澄は慌ててぶんぶんと首を振った。

知奈を心配させているのは自分でもわかっている。

そして口には出さないが、雪也も自分を見るたび心配そうな視線を向ける。

しかし今の段階で、環とのことを言うわけにはいかない。

まだ自分の中で結論が出ていない、今の段階では……。


「……っ、知奈、後で話すから! 話せるようになったら、絶対に話すから!」

「話せるようになったらじゃなくて、今話せ! さあ言え!!」

「ち、知奈……ぐ、……っ」


知奈の腕が花澄の首元を締め上げる。

……寝不足の今は、些細なじゃれ合いであっても体力的に辛い。

しかも競技に出た後なので、体力はさらに削られている。

花澄は頭がくらっとするのを感じながら、必死で知奈の腕を叩いた。


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