恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄の問いかけに、環はふっと視線を逸らした。
あまり触れて欲しくない、と言いたげなその態度。
花澄は環の制服の裾を掴み、つんつんと引いた。
環はしばし無言で花澄の顔を見つめた後、諦めたように息をついた。
「……理由としてはそうだ。が、別にこれを食べたかったからじゃない」
「……?」
「おれがあれを好きだった理由は、あいつとお前が似てるって思ったからだ」
「え?」
意外な言葉に、花澄は目を見開いた。
……自分とアンパンマンが、似てる?
アンパンマンと言えば、例の『愛と勇気だけが友達』というヒーローキャラだ。
その歌詞に子供心に何かもの悲しいものを感じたのは、花澄だけではないはずだ。
と花澄が言うと、環は軽く首を振った。
「『愛と勇気だけが友達』というのは、別に奴が寂しい世界で生きてるってワケじゃない。『いざという時、人はひとりで戦うしかない』という意味が、裏に込められている」
「……え、そうなの?」
「おれはそう解釈してる。前後の歌詞から推測して、だけどな」
環の言葉に、花澄はへぇと眉を上げた。
さすが環、ただ歌を聞いていただけではなかったらしい。