恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



父の工房は本家から借金をし建てたもので、まだ借金は半分ほどしか返済できていない。

藍染めの方はだいぶ軌道には乗ってきたが、安定して利益を出せるようになるためには、まだ数年はかかるだろう。

そしてこのご時世、藍染めだけでは厳しいので、父はこれから藍以外の他の草木染めも本格的に始めるつもりらしい。


「ヨモギはそれくらいあれば十分でしょう。あとはハルジオンですね」

「ん、わかった」


――――どうやら、洗濯場の辺りに律子がいるらしい。

丁寧口調で言った環を、花澄はちらりと見た。

環は家にいる時は、たいていジーンズにTシャツというラフで動きやすい格好をしている。

高校生であれば男子であってもそれなりにお洒落に気を配るものだとは思うが、環はお洒落にはまるで無頓着だ。

わざわざ気を遣わなくても人目を引く容貌をしているので、必要ないといえば必要ないのかもしれないが。


「……」


花澄はハルジオンをまとめて縛りながら、環を横目で見た。

……環の堅実さは、プライベートでも徹底している。


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