恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



雪也がどれほど、自分を見てくれていたのか……。

どれほど、自分を愛してくれていたのか……。

……今になって、それがわかるなんて……。

花澄は両手で手を覆い、嗚咽した。


――――自分は、何も見えていなかった。


環の心も、雪也の心も……。

自分の気持ちだけで精いっぱいで、周りが全く見えていなかった。

花澄の胸に取り返しのつかない後悔が湧き上がる。

それは容赦なく花澄の胸を抉り、引き裂いていく。


花澄は茫洋とした目で窓の外に視線を投げた。

窓の外、桐の枝に止まった鳥が、小さな声で鳴いている。

ヒュ――、ヒュ――という、もの哀しげなその鳴き声は……虎鶫だ。

不吉を呼び寄せるという、鳥……。


環と初めて結ばれた、あの夜。

あの夜も虎鶫の鳴き声が窓の外に響いていた。

あれは、こうなることの予兆だったのかもしれない……。



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