恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



と、花澄が言うと。

環は野菜を切っていた手をピタッと止めた。

驚いたように花澄を振り返る。


「……なんだ、いきなり?」

「ごめん。……ちょっと、気になって」


花澄は小声で呟くように言い、俯いた。

環は花澄をじっと訝しげに見た後、口を開く。


「……具体的に何か決めてるわけじゃないが、外で仕事をしたいと思ってる」

「……外?」

「日本の外。海外だ」


環の言葉に、花澄は頭をガンッと殴られたような気がした。

――――海外。

目を見開いた花澄を一瞥し、環は続ける。


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