恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



男の子は後ろの池を振り返り苦しげに言う。

――――包み紙を持った手が、震えている。

花澄は男の子の横顔をじっと見つめた。

きっとこの男の子は、とても優しいのだろう。

だから、貰ったものを食べられないことにこんなにも苦しんでいる。

花澄は思わずぶんぶんと首を振り、言った。


『……優しいよ』

『……?』

『うまく言えないけど、……優しくないなんてこと、ない。だって嫌ならゴミ箱に捨てればいいのに、ここでこうやって、悩んでるんだもの……』


花澄が言うと、男の子は驚いたように目を見開いた。

大きく見開かれた、くっきりとした二重の瞳。

――――月の光を溶かしたかのような、透明感のある綺麗な瞳。

花澄は男の子の目を見つめながら、ぐっと手を拳に握りしめ、言った。


『あなたは優しいよ。……だから食べれないって言っても、誰も嫌ったりしないよ。少なくとも私は、嫌いにはならないよ?』

『……っ!』


男の子はますます驚いたように目を見開いた。

――――その時。


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