恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



「私と繁次は用事で参加できないから、お前達だけで行っておいで。くれぐれも失礼のないようにね」

「はい、わかりました、おばあさま」


花澄はこくりと頷いた。

月杜家の避暑パーティは、パーティ自体が行われるのは一日だけだが、花澄や美鈴は月杜兄弟の婚約者ということで、パーティの日を挟んで毎年3日間ほど別荘に滞在している。

毎年恒例の夏合宿のようなものだ。

花澄はポケットから携帯を取り出し、雪也から貰ったストラップをじっと見つめた。

……今年は、何かいいことがあるかもしれない……。

美鈴も来るので過度な期待はしない方がいいと分かっているが、ついドキドキしてしまう。

花澄は頬を染め、ストラップに付いたぬいぐるみをきゅっと握りしめた。


……そういえば。

同じストラップを環も持っているのだが、環はあれをどうするつもりなのだろうか。

携帯クリーナーとして使うのだろうか。

花澄はうーんと首を捻った。

環の考えていることは、正直よくわからない。

あまり変な使い方をするなら、一言言ってやるつもりだが……。

花澄は立ち上がり、携帯をポケットに戻してリビングを出た。



< 98 / 476 >

この作品をシェア

pagetop