恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~
「おれだ。金はまとまったか?」
『……』
「そうか。ではそいつを全部、今から言う口座に突っ込め。鎌倉商工銀行の41XX356、普通預金だ」
暁生は手早く言い、パタンと携帯を閉じた。
花澄は固まったまま暁生を凝視していた。
────どうして暁生が、工房の口座番号を知っているのか。
予感が確信に変わっていく。
心が、衝撃のあまり凍りつく。
花澄は震える唇を開いた。
掠れた声で、その名を告げる。
「…………環?」