恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~

6.恋の残り火




<side.環>



01:00。

書斎の机の上に置かれたランプが、暗がりの中、手元の書類をぼんやりと映し出す。

環は携帯を片手に、書類をじっと見つめながら口を開いた。


「……ああ。広州の『華商集団』だ。奴らを徹底的に調べ上げろ」

『了解いたしました、暁生様。工房にあった証拠書類は如何致しますか?』

「法廷で使うかもしれない。春燕に渡しておけ。……あと、幇に連絡しろ」

『……っ! 幇に、ですか?』

「ああ。ルールを守らない奴はこの世界で商売する資格はない。……おれからは以上だ。何かあったらすぐに連絡を入れてくれ」

『……はっ、畏まりました、暁生様』


環はピッと携帯を切った。

手にした工房の資金繰り表を眺めつつ、ため息をつく。

……この資金繰り表は急遽、部下を工房に赴かせ、命じて作らせたものだ。

そもそもこれがない状態でよく工房を経営してきたものだと思う。

花澄の父の繁次は昔から職人気質で、あまり経営に関する知識は持っていなかったため、環が屋敷にいた頃は環が資金繰り表を作っていた。

しかし環が日本を離れてからは誰もこれを作っていなかったらしい。


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