恋獄 ～ 紅き情炎の檻 ～

目を剥いた花澄に、環はくすくすと笑う。

────花澄の大好きな、環の榛色の瞳。

今は大人の男の余裕をもって花澄を見つめている、その瞳……。



……7年間の別離を経て、再び絡み合った二人の運命。

別離の苦しみは互いを成長させ、今、二人は再び強い絆で結ばれた。

そしてこれから、新たな決意を胸に、新しい世界へと一歩踏み出す。

懐かしい想い出を二人で分け合いながら、未来へ続く道を歩いていく。


窓の外で、春風に誘われて飛んできた桜の花びらがふわふわと舞っている。

……過去の全てを流し去り、新しい季節の到来を告げる薄紅色の花びら。

哀しみも苦しみも、花びらに乗って空へと消えていく。



「────行ってらっしゃい、環!」



笑顔を向ける花澄に、環も優しい笑みを返す。

ずっと昔から大好きだった、環の微笑み。

花澄は環の顔を見上げ、花のような笑顔で手を振った……。




[恋獄　～ 紅き情炎の檻 ～[完]]


※曼珠沙華について

「曼珠沙華」は「天上の花」という意味。
慶事が起こる前触れには赤い花が天からふってくるという仏教の経典による。

花言葉 : 「想うはあなた一人」