恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



そして、それと同時に……

花澄を罪の道に引き込んでしまった。

綺麗な人生を歩もうとしていた花澄を、穢れた道に引き込んでしまった……。


もし花澄がこのまま賢吾と結婚したら、自分は花澄にとって最も人生を脅かす存在になるだろう。

花澄と賢吾の未来に邪魔な人間がいるとしたら、それは自分以外にありえない。


賢吾は今夜はまだ、帰ってこない。

しかし明日の夜には帰ってくるのだ。

花澄は恐らく賢吾に自分とのことを告げるつもりだろう。

彼女はそういうことを隠せる性格ではないし、もちろん雪也もそのつもりだ。

しかし賢吾が何と言うかはわからない。

それでも自分は彼女と結婚する、と言うかもしれない……。


兄が花澄を抱くと思うと、煮え滾るような嫉妬が胸を焼く。

兄より先に花澄の体を知ったという優越感もないことはない。

……しかし兄は今、花澄の正式な婚約者だ。

そんなことでしか優越感を感じられない自分が、義弟となる立場でありながら二人の未来を汚そうとしている自分が、ひどく醜いものに思える。


< 253 / 334 >

この作品をシェア

pagetop