恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



『出張が木曜まで長引くことになった。

で、作業が溜まっているため花澄を午後からこちらに向かわせる。

何かあったら連絡をくれ』


「……っ」


雪也は思わず手を拳に握りしめた。

胸が石のように重くなる。

……賢吾は明日まで戻ってこないと思っていた。

しかしまさか、花澄を大阪に呼び寄せるとは……。


胸にこみ上げる、激しい憤り。

彼女を意のままにできる賢吾に殺したいと思うほどの嫉妬を覚える。

……自分がまさか、兄にこんな感情を抱くとは……。

自分でもコントロールできない強い感情に、雪也は呻いた。


恐らく……

兄と花澄が結婚すれば、こんなことは日常茶飯事になるのだろう。

そしてそのたびに、自分は嫉妬し、苦しむのだろう。

……兄と彼女の関係が続く限り、永遠に。


雪也は自らの心に蠢く闇から目をそらすように、賢吾からのメールを閉じた……。



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