恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



花澄は賢吾に差し出された書類を受け取った。

どうやら製品仕様書のようだ。

右上に『川波重工 大阪工場』と書かれているのを見ると、どうやら川波重工から渡されたものらしい。


「これを明日、雪也に渡してほしい。確かあいつ、明日滋賀工場に行く予定になってるから」

「……え?」

「君は一泊延泊して、そのまま明日の朝、滋賀工場に向かってほしい。ここからだと一時間もあれば行けるんじゃないかな?」

「で、でも……賢吾さんは?」

「僕はこのあと栃木で用事があるんだ。例の会食があるから土曜の午前には戻りたいけど、ちょっと微妙かもしれないな……。というわけで、それ、よろしく」


賢吾は言い、ひらひらと手を振って部屋を出ていく。

花澄は驚きのあまり目を見開いた。


……明日は、金曜だ。

しかも滋賀工場に行くことになるなんて……。


賢吾の姿が扉の向こうに消えていく。

パタン、と扉が閉じるのを花澄は唖然と見つめていた。


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