恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



その日の午後。

二人はその足で花澄の父がいる箱根の工房へと向かった。

突然の来訪に驚く父に、二人は奥の事務室でこれまでの経緯をざっと説明した。


そもそも今回の婚約が賢吾の思惑により仕組まれたものであったこと、そして今の花澄と雪也の関係、そしてこれからの意向等々説明すること15分。


話を聞き終わった繁次は、腕を組んでうーむと首を捻った。

しばらく何やら考え込んだ後、顔を上げて花澄を見る。


「……正直、な。お前と賢吾君の話を聞いた時から、わしもそんな気はしてたんだ」

「え?」

「雪也君が納得した上でお前達の婚約を認めたならいいんだが、……そうでなければ、確実にひと悶着起こるだろうなと思っていた」

「……そ、そうなの?」


父の言葉に花澄は仰天した。

父は苦笑し、雪也に視線を流す。


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