恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



────午後。

花澄はドレスアップし、雪也と共にホールの入り口で来客への挨拶を行っていた。

花澄が身に着けているのは一昨日雪也に買ってもらったワンショルダーの若草色のドレスで、首元には月の形のペンダントを付けている。

雪也は黒を基調にした上品なパーティ用のスーツを身に付けており、軽く髪を整えたその姿はまさに『月杜家の御曹司』という感じだ。


「あら、こちらが雪也さんの婚約者の方ですのね? 初々しいこと」

「藤堂花澄です。よろしくお願いいたします」


花澄はにこりと笑い、入ってきた壮年のご婦人に優雅に会釈した。

『昔取った杵柄』を総動員し、なんとかボロを出さないよう努めているが、やはり7年ぶりのパーティはそれなりに肩が凝る。

何人かに会釈した後、花澄はホールの入り口に現れた、見知った人の姿に思わず息を飲んだ。

長く真っ直ぐな黒髪を靡かせ、上品な薄紫色のドレスを身に着けて毅然と歩いてくる、その女性は……。


「……美鈴……」

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