恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



昔は服のことなど気にもせず、雪也と一緒に海や山で駆け回って遊んでいた。

泥まみれになっても、雨に濡れても、雪也と一緒に遊んでいるときはそんなことは気にもせず、雪也との時間にただ夢中になっていた。

けれど、今は……。


少し目を伏せた花澄の前で、雪也はいつもと同じ穏やかな笑みを浮かべている。

多分雪也は自分がどんな格好をしていても、変わらぬ視線を向けてくれるだろう。


「どうかした?」

「……あ、ううん。なんでもないよ」


花澄は慌てて視線を上げ、首を振った。

今さら服のことを気にしてもしょうがない。

と思った花澄に、雪也はくすりと笑って告げる。


「……考えてみたら、こういう店に二人で来るのは初めてだな。ずっと君とこういうデートをしたいって思ってたのに、いざその時となると少し緊張するよ」

「……え?」


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