ただ、逢いたい



『今度の土曜日、あいている?』



「土曜日?
うん、あいているよ」



『じゃあ、土曜日に逢おう。
逃げずに、話そう』




最後は、呟くように言った。


あたしにももちろん聞こえていたけど、なんだか自分自身に言っているように聞こえた。




「大丈夫です。
あたしも逃げないから」




そう言うと、彼は笑った。




『それじゃあ、土曜日にな』



「うん」




約束して、電話を切った。


切ったあと、何も考えられなかった。

携帯を持つ手は、震えていた。




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