背中を撫でる指先【TABOO】


後ろから人が押し寄せて、間もなく身動きの取れない状況になる。

「香緒里、大丈夫か?」

「うん。拓郎も大丈夫?」

「なんとか」

真後ろからは敦也と友達とおぼしき人の声が聞こえる。

私と拓郎は、はぐれない様に手をつなぎ直して空にまた目を向けた。



 しばらく花火に集中していると、モゾ……と背中を撫でるような感触がした。

気のせいかなと思っていると、それはゆっくり上下を行き来し始める。

敦也だ。私はすぐに気が付いた。

けれども身動き一つ取れない状況に、逃れる事も叶わない。



最初は一本の指で背中の中心をなぞる様に、次は全ての指でじっくり熱を伝える様に。

その触れ方は、付き合っていたあの頃を思い出させる。



思わず声をもらしそうになって、慌ててそれを押し殺す。

隣に拓郎がいるのに。

そう思いながらも、私の全神経は背中に集中してしまう。

目の前の花火は霞んでいて、何を見ているのかも分からない。



そっと、空いたもう片方の手を背中に回すと、私の背中を撫でていた指が絡められた。

この花火が終わるまで、ほんの少しの間だけ―――



 
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

危険なスキ ~不良くんのお気に入り~

総文字数/72,075

恋愛(キケン・ダーク)250ページ

表紙を見る
アイツは私の初彼氏2

総文字数/2,999

恋愛(学園)8ページ

表紙を見る
怪盗は静かな夜に出会う

総文字数/8,376

恋愛(その他)17ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop