私の太陽はキミ
そして…暖かくて、大きい手で私の頭を優しく撫でた。

「いいの…?こんなことして。彼女が怒るんじゃない?」
私は、泣いて感情もコントロールできないのか…、そんなことを聞いてしまった。

「フッ。いないよ。彼女なんか。俺みたいなやつ誰も、もらってくれないよ」

「いるよ…あんた優しいんだしさ」

「俺が優しい?そんなわけがない。俺なんかちっとも優しくないよ」

嘘だよ…こんな初対面の人にここまで話してくれて抱きしめてくれる人なんてあんたぐらいだと思うよ。あんたは自分で気づいてないかもしれないけど優しいんだよ…。

「じゃあ、あんたは悪い人…?」

「そうだ。怖くて悪魔みたいなやつなんだぞ~」

「あはは。やめてよ。そんな耳元で言われても全然怖くないよー」
優しい声で脅しても全然怖くなんてないんだから。

「あ、もういいよ。ありがと。なんか楽になったよ」
私は自分から引き離した。

「そうか?だったらいいけど。そうだ、お前…名前は?」
そっか…聞くの忘れてたね。

「私?私は、結城 空だよ。……あ、今似合わない名前とか思ったでしょ?」

「ちょっとね…ハハ、嘘だよ。似合ってるよ、お前の笑った時の顔が優しくて『空』ってすごい似合ってるよ」

何…言ってんの…。
そんなこと言われたら…ドキッってなるじゃんか。
誤解しちゃうでしょ…。

「あ、もしかして…今、俺に惚れた?」

彼はニヤリと口角をあげて言った。

「なっ!惚れるわけないじゃん!」

「嘘だって!」
ホントに嘘ばっかりつく人だな。どれが本物かわかんないよ。

「あんたの名前は?」

「あー俺は、神代 陽翔だよ。カッコイイだろ?」

「自分で言うな!なんて書くの?」

「太陽の陽に翔るだよ。空は普通の空?」

「うんそうだよ。陽翔って…いい名前だね」

なんか…キラキラした名前だな…。
そういう風に見えるのは陽翔自身がキラキラしてるからかな?

「そうだろ?……お前は空で俺は太陽だな」

「何…くさいこと言ってんのー?」

でも…なんか二人で一人みたいでいいね…。

「なんだよ、うるせーな。ほら帰れ」

「わかったって。陽翔!また会える?」

……なぜだかわかんないけど…また陽翔に会いたい。

「あぁ。会えるよきっと。また会おうな、空…」

「うん!じゃあね!」

お互いに反対の道を歩んだ…。

一度も振り返らずに…。だって振り返るとなんだか…ダメなような…
そんな気がする…。



陽翔…か。
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