君の左手が気になるのは、なぜだろう?
「ちょっと待てって!」

ヤツが追いかけてきた。

「ちょっと来ないでよ」

「待てって」
とヤツがあたしの前に後ろから回り込んだ。
さすが、サッカー部だけあって
足は速いみたいだ。

「そんなに嫌わなくてもいいじゃん?」

「好きになる理由もないし」と私が言うと、
ヤツは、ちょっと顔をシカメた。

「だれでもよかったんでしょ?」と
私はたたみかける。

「…ていうか、お前に頼んだろ?」

「は?
チラシ投げつけるのが
人にお願いしたっていうの?
信じられないし」

「もう~」とヤツは自分の頭を掻きむしった。

そのとき、遠くから「始めるぞー!」と
ヤツを呼ぶ声。

「おう」と返事したヤツは、
「わーった。サンキューな」と
私に言って、駆けていった。


…なんで私、ムキになってんだろう?

ふいにそんな気持ちになった
自分にびっくりして、
逃げるみたいにグラウンドを去った。
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