広い背中
私が答えないのを見越したように、次の質問が来た。

「俺がなぜ、お前のそばいるのか分かってないのか」

分かっているつもりだった。少なくとも6日前までは。だから、そんな言い方をしないで。また勘違いしそうになる。

「俺が興味がないと言ったから、怒ったのか?」

その通りだよ。分かってるなら言わないで。

何も答えない私に、誠ははぁとため息を一つ吐いて、声色を変えた。

「今日まで何してたんだ」

いつもの誠に少しだけ戻ったから、しょうがなく言葉を返した。

「別に、なにも」

「彼氏には会ったのか?」

「会ってないけど」

「珍しいな。いつも週に1.2回は会ってるだろ」

「そんな気分じゃなかったから」

「なんで」

なんでって・・・イタイ自分がみじめで、なんて言えない。

「また黙秘か」

しょうがないな、とでもいうように笑う。

なんだか今日の誠は意地悪だ。

いつもはもっと甘やかしてくれるのに。

甘やかされることに慣れてしまった私は、いつもと違う誠に不安になる。

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