ぽるかLIVING
その日はあいにく大した出物もなくて

彼女に合う廃棄品はなくて


「今日はこんなものしか、ないよ。

 いいのが出るかもしれないから

 また覗きにおいでよ。」


「ありがとうございます。十分です。」


そう言って試着室から出てきた。


彼女はにっこり笑うと、


「持ち合わせなくて、この服と取り替えていただけますか?」


彼女が渡してきた服は、高級なシルク素材で、

有名ブランドのものだった。

やや汚れてはいるがクリーニングに出せば

立派に着られるものだった。


「これはまだ着られるし、ブランドものじゃないか、受け取れないよ?」


「ダメですか?困りましたね、でも私他の物なくて、

 でも、これじゃ寒くて凍えてしまいますし、

 なんとかお願いできないでしょうか?」


「兄さんまけてあげなよ、こんなべっぴんさんの頼み

 聞いてあげないんじゃ撥が当たるよ。」


「いや、そういうんじゃなくて、

 わかったよ、じゃあ、明日もう一度おいで、

 そしたらもう少しいいの用意してあげるかね?」


「いいえ、これで十分です。

 いろいろご親切にありがとうございます。」

そうしてまたニッコリと笑った。
< 69 / 82 >

この作品をシェア

pagetop