晴れのち雨

雲隠れしていた月が雲から逃げた。

ただそれだけのこと。

なのに涙が止まらない。


月明かりに照らされて、障子しか光を遮るものが無い和室には仏壇があった。



仏壇には写真が置いてあり、女の人と男の子が写っていた。


私は二人を知っていた。

写真たての中で笑っていた二人。

先生にとって大切な人達。

きっと失ってしまった家族。



写真たてに触れなきゃ良かった。

襖なんか開けなきゃ良かった。




"「俺が罪を犯してても?」"


あの日の先生の言葉を思い出す。

先生が二人を殺しただとか
そういことは思わなかったが
きっとこの事が関係してるんだと思った。


私じゃダメなんだ。

先生の悲しみを取り除くなんて、
出来ないや...


自分のしてしまった事に後悔した。

私がシュウに感じた罪と
先生が感じている罪は大きく違った。


何てことを先生にしてしまったんだろう。

ただでさえ罪の意識で逃げ道の無い先生に私を抱かせてしまった。

そのことに先生が罪を感じていたら...。


そう思うと苦しくて、苦しくて息ができなかった。

先生の感じている罪は何?

私じゃない誰かが先生を助けるには
私はどうしたらいいんだろう。


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