晴れのち雨


「死ぬ訳ちゃうねんから、会おうと思たらいつでも会えるよ」


「なっ?」っと私の頭の上に手を置く。


恥ずかしくなった私は先生に


「本社って何処にあるんですか?」

と俯きながら訊いた。


「ん?県内やから今年中は気軽に会えると思うで。」


「県内」という事実に安心したが
「今年中」という言葉に引っかかった。


「今年中??」


「あ..うん。来年から海外になりそうやねん...」


「そうなんだ...」

明らかに落ち込む私。


「あっ。でも!!
アオちゃんが大学受かったら、いつか絶対お祝いしに会いに行くから!!」


子供をあやすように私に接する先生。


「いつまで海外にいるんですか?」


震えないように言った。


「うーん。はっきり分からんなぁ...
海外で教育関係の会社を創るねんけど、
最低5年としか言われてへんわ...
本社ではその研修するからそん時に分かるかもな〜。」


"5年"と聞いて私はもう先生に会えなくなると思った。


たかが塾の講師と生徒。

5年も経ったら私のことなんて忘れてしまうだろうー

5年も経って告白されても困る一方だろうー


今の私には5年経って、先生に告白する勇気もなければ自信もなかった。



...神様の忠告かもしれないと思った。






< 55 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop