パパ、もう一度ほめて




――父は、死にました。


意識を取り戻すことも、
苦しむこともなく。


とても楽しみだった遊園地。
家族で楽しむ予定だった今日。
幸せに包まれていた家族。


それが今日、
なんの前触れもなく。

ただ神のイタズラで。
全て、壊されました。



「パパ…?」

病院の、ベットに寝転がるお父さんを、親族で囲む。

すすり泣きや、声を出して泣く人、座り込む人、衝撃すぎて治療室からいなくなる人、様々だった。

私は、ただ、唖然とした。

失ったものがあまりにも
大きすぎて、

よく分からなくなる。

心の整理がつかない。

認めたくない。
認めたくない。


冷たくなったお父さんの足に触れる。

大きいな、
私の足とは大違い。

いつの日だったか、
お父さんが私の足を見て笑いながら

『お前の足ちっさくて可愛いなー』

なんて言ってくれたっけ。

テレビで絵が上手い人が出てたとき、

『お前はいつあんな有名な漫画家になるんやー?』

て嬉しそうに聞いてきたこともあった。


なによ
なんなのよ


なんで、
漫画家になるまで、
見守ってくれないのよ


なんで、
成人するまで
傍にいてくれないの。


私の人生はまだまだなのよ

まだ、夢だって叶ってない。

私の夢は、形としては漫画家だったけど、
本当の夢は誰にも言わなかったけど、


家族を幸せにすることが私の夢なんだよ?

どうして私たち家族を、どん底に突き落とすの?

ねえ、答えてよ。
いまなら許してあげるから。
目、醒ましてよ。
笑ってよ。
また、絵上手くなったなて、
あの時みたいに誉めてよ。

ねぇ。


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