大人の関係
新しい日常
やっと一週間も終わりに近づいた金曜日の朝。
いつものようにゆっくりとコーヒーを楽しんでいると携帯が震え、メールを知らせた。

『空いてる日ある?』


支店の福嶋柚希(ふくしまゆずき)だ。
支店で営業をしている柚希と春美は同期、美沙の1年先輩である。
春美が結婚するまでは3人でよく遊んでいた。


『来週は水曜、木曜日以外なら空いてます。ちなみに今日でも』
そうメールすると、即電話がかかってきた。

せっかちな柚希はいつも挨拶もそこそこに本題からしゃべる。

「じゃあ、急だけど今日いつものお店どう?」
「大丈夫ですよ」
「じゃあ、春美にも伝えておいて」
「え~。春美さんも?大丈夫ですか?」
「いや、春美と話してて会おうってなったから。ちょっと話したいことあるから、しおりちゃんは誘っちゃだめよ」
「わかりましたー。春美さんに伝えますね」
「じゃあ、7時に予約するから」

それだけ言うとすぐに電話は切られた。
週末は予定もないし、家にいると余計な事を考えてしまうからちょうどよかった。
柚希のタイミングの良さに感謝しながら、飲み終えたカップを片づけ、デスクに戻る。
始業時間まであと10分。
まだしおりは来ていない。


柚希もしおりを嫌っている訳ではないが、相談事などの時にはしおりは誘わないというのは暗黙のルールになっている。
フレンドリーなのはいいことなのだが、どうも聞いてしまったことは誰かに話さないと気が済まない性格らしく、内緒話は出来ないのだ。
今回もなにかオープンにしたくはない話なのだろう。


変則勤務のため、もう仕事をしている春美の横に行く。
美沙はまだ一応始業前だが、春美は仕事中のためメモを書き渡した。
『今日、いつものお店に7時』
メモをちらっと見、
「うん。分かった」
メモを引出にしまいそれだけ言って、すぐパソコンに視線を戻す。


美沙もデスクに戻り、仕事を開始した。

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