綿菓子と唐辛子

「支えたくて…？何言ってるんですか…？」



つーか、今、ヒメのことを名前で…



『…話すと長くなるし、こんなことを電話で話すのは無理です。知りたかったら、今すぐこっちに来るといい』

「…」



男がそう言った瞬間、後ろで甲高い声が聞こえた。

おそらく、ヒメだ。

うまくは聞き取れなかったけど、男が言い放った言葉に反論しているみたいだ。


…つまりは、俺が行くのを、ヒメは拒んでいるということ。



『俺は、本郷コウタロウと言います。もしそちらがこっちに本当に来るのであれば、俺の電話番号を教えます。それから、ここの最寄り駅も』

「…」

『…俺は、姫芽とは付き合わない方がいいと言った。けど、アンタはそれを押しきって姫芽のことを想うのであれば、です』

「…」


相変わらず、反論の声は後ろから聞こえている。

それは少しずつ大きくなって、ハッキリと言葉として耳に入るようにもなってきた。