綿菓子と唐辛子
「…ヒメ、こっち向いて」
「や、待って、今はほんとに勘弁して…っ」
「いーから」
どこかへ飛んでいってしまいそうな理性をなんとか繋ぎとめて。
ヒメの腕をとって、俺の方を向かせた。
「………」
…腕の、輪っかになった痕。
この傷も、あの日負った傷。
「…ヒメ」
「ひゃっ」
細い腕を持って、その輪っかになった腕に、やんわりと口付けた。
「…ナツ……っ、心臓こわれるよ…っ」
…何言ってんだか。
さっきはあんなに煽ってきたくせに。
「…そんなんで壊れててどーすんの」
もっと、もっと、俺のことを好きになればいい。
…きっと、ヒメの俺を思う気持ちは、俺に敵うわけないんだから。
「…キスさせて、ヒメ」
「…っ」
「していい?」
うんうん、と、小刻みに揺れるヒメが、この上なく可愛くて。
愛しい気持ちが溢れてどうしようもなくなる前に、俺は、ヒメのくちびるに自分のくちびるを押し当てた。