綿菓子と唐辛子




「…ヒメ、こっち向いて」

「や、待って、今はほんとに勘弁して…っ」

「いーから」



どこかへ飛んでいってしまいそうな理性をなんとか繋ぎとめて。


ヒメの腕をとって、俺の方を向かせた。



「………」



…腕の、輪っかになった痕。


この傷も、あの日負った傷。





「…ヒメ」

「ひゃっ」




細い腕を持って、その輪っかになった腕に、やんわりと口付けた。




「…ナツ……っ、心臓こわれるよ…っ」




…何言ってんだか。
さっきはあんなに煽ってきたくせに。





「…そんなんで壊れててどーすんの」





もっと、もっと、俺のことを好きになればいい。


…きっと、ヒメの俺を思う気持ちは、俺に敵うわけないんだから。






「…キスさせて、ヒメ」


「…っ」


「していい?」




うんうん、と、小刻みに揺れるヒメが、この上なく可愛くて。



愛しい気持ちが溢れてどうしようもなくなる前に、俺は、ヒメのくちびるに自分のくちびるを押し当てた。







< 245 / 265 >

この作品をシェア

pagetop