綿菓子と唐辛子


「部長って、わかりやすいですよねぇ」


急いで挽き肉を買い直してきてもらって、出来上がった麻婆豆腐。

これはもう、夕飯はいらないな。


「なにがだよ、環」


みんなでテーブルを囲んでいるときに、環は目を細めて俺を見た。

軽く、さげすんでる。そんな目だ。


「そんなにボーッとして。部長がそういう時って、絶対何かショックなことがあってるんですよ」

「…!」

「違うんですか?」



さ、さすがだこの女…。
伊達にこんな部長の補佐をやってないな…。

ていうか俺、そんなに態度に出やすいのか。


「後輩が、先輩の事情に首つっこむんじゃねーよ」

「だったら先輩面する前に、私情を部活に持ち込まないでくださいよー」

「はい、すみません」


何も否定をしない俺に、部員のやつらは面白がってつついてきた。

特に新入生の男ども。クソッ。


「えっ、先輩、なんすか、彼女から振られでもしたんですか?」

「……ちげーよ、ばか」


彼女になってくれたんだったら、どんなに嬉しかったか。


「でも、あらゆることに興味ない先輩がここまで弱ってるって、恋以外のなにものでもないですよね!」

「はぁ?!?!」


何言ってんだ、こいつら!!



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