プラチナブルーの夏
幾分夜の空気は涼しくなっていて、

ほんの少しだけ肌寒くもあった。
 
住処のオレンジ色の明かりをつけてからも

あたし達は何もしゃべらずにいた。
 
ピリピリと、全身に軽い痺れを感じるように

何を言おうとしなくてもその空気が伝わってくる。
 
わかってしまうからこそ、何よりもそれが淋しかった。


『もうすぐ、お別れなんだ』
 

トモロウとあたしが乗り越えなくてはいけない何かは、

同じ場所には、決してないのだから。

「おやすみ」
 
いつものようにトモロウが、オレンジを消そうとしたその時。
 
あたしは横たわる彼に跨って、立て膝をついたまま

その頬を両手でなでた。

「…ミズキ…?どう…」
 
どうしたの?の形の唇に、あたしは自分の唇を軽く重ね、

すぐに離れた。
 

もう、お別れなのだから。
 
もう二度と、会えないのならばーーー。
 

再び唇を重ねた時、トモロウは言った。
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