プラチナブルーの夏
12.
ほんでなぁ、と、一番食べるのが遅いリツコが溶けたアイスでペトペトになった指をなめながら切り出した。

「ミズキ、この人が私の彼氏のユウスケ。ユウスケ、この子が私の親友のミズキやよ」
 
めっちゃかわいいやろ?とリツコが聞くと、ユウスケさんは黙って軽く頷いた。
 
あたしはユウスケさんが頷いてくれた事より、リツコが言ってくれた

『親友』という響きがくすぐったくて、ちょっとだけ照れくさかったけど嬉しかった。
 
麦茶のコップの水滴にも、リツコの匂いがするこの部屋にも、カーテン越しに窓から差し込む日差しに光るユウスケさんの茶色い髪にも。

『いいんだよ』『あなたは、ここにいてもいいんだよ』

そう言ってもらえているような気持ちになった。

こんなにも満たされた気持ちになった事は、一度もない。
 
この、なんとも言えない安心感を噛みしめるようにあたしはリツコの部屋のあちこちをそっと眺め渡した。
 
ユウスケさんが時折こちらに投げている視線になんて、ほんの少しも気づかずに。
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