アカイ花†Vermilion Flower

ずぶ濡れになってやっと辿り着いた場所は、割と都心の近くにある賃貸マンション。

私は、ここ五階に住む。

ドアの前に立ち鍵を開けた私は、何気に黒マジックで大きく書かれた表札を見た。

男性の字で書かれた文字は、『美浦』

そう私の名前は、美浦里湖 (ミウラリコ)。

確か、過去に一度、蜂谷という姓を名乗った記憶がある。

そう、私はバツイチで、この字を書いた男・蜂谷浅緋(ハチヤアサヒ)が元旦那。


『こんなに小さく丸字で書くなよ
 
 女が一人で住んでますって
 自分から教えてどうすんの?

 駄目だ、ペン貸せ』


私の字の上からデカデカと字を書く浅緋の事を、私は昔、ものすごーく好きで愛し、そして愛された。

それは、昔のお話・・・。
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