小さな夜空

「うわ…」

楽しみにしていた花火大会の夜。
遅れちゃいけない、と早めに家を出たのに。
ずらりと並んだ出店と行き交う人の多さに、私は茫然と立ちつくす。

小柄な私は人混みが苦手。
遅刻に落し物、ケガまで…
とにかく、良い思い出がない。
「きゃっ」
不意に誰かに突き飛ばされて、目を瞑った次の瞬間。
大きな手が、私の腕を掴んだ。

「大丈夫か?」
かけられたのは、聞き覚えのある声。
そして、鼻先に見覚えのあるTシャツ。
見知った顔が心配そうに私を覗きこんでいた。
「修二くん!」

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