皇帝のサイコロ
汗がじっとりと背中に染みる。

「慎ちゃん!」

名前を呼ばれて右を向いた。

その女性は俺を素通りして、奥にいる男性のもとへ駆け寄っていった。

なんだ、同じ名前か。

驚いた。

何を期待しているのか。

またボーッとしているとやっと電車がきた。

出てくる人を待って、中へ入る。

人は少なく席がいくつも空いていたが、吊革に掴まる。

ガタガタと揺れる振動が懐かしい。

電車に乗ったのなんて高校生ぶりだ。

15分程して電車が刈浜へ到着した。

降りると、海の香りが風にのって匂った。
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