瀬々悠の裏事情
定期報告 其の参



報告つっても大した事はないんすけどね。
現在俺が取り扱ってるのは、二ヶ月前から調査中の件と社長に頼まれた案件、あとお得意様の依頼ぐらいですから。

あ、俺じゃない?じゃあ誰ですか?
え、ゆうちゃん?誰すかそれ。
………………………。
ああ、なんだ。
瀬々ちゃんですか。
ゆうちゃんとか言うから
誰かと思いましたよ。

俺に聞かなくても、本人に聞けば素直に答えて……くれないですよね、はい。
別に社長が嫌いとかじゃないですよ。
誰に対してもそうなんです。
直属の上司である俺でさえも。
嘘じゃないですって。
本当ですよ。
あとよく隠し事もしますから。
いやいや本当ですって。

ほら、この前チーム・オルディネの新リーデルが発表されたじゃないすか。
てっきり五指のジョエルがなるものと思ってたら、誰もが予想してなかった桜空家の長女。
俺達でさえ公式発表されるまで分からなかったってのに、瀬々ちゃん知ってたんですよ。
何で言わなかったんだって聞いたら、何て言ったと思います?
『あかねっちは俺の大切なオトモダチなんス!言わないでって言われたから、秘密にしちゃいやした。てへっ☆』
ですよ、マジで。
怒るどころか気が抜けちゃいましたよ。全く。
おまけに先輩ともアポ取ってるみたいな言い方で……ってまぁそれは置いといて。
とにかく高価な情報なのに勿体無いと思いつつも、なんだかんだで安心しました。
瀬々ちゃん不器用ですから。
休みの日も俺達のあとを付いて回るし、まだ学生なのに仕事一筋みたいな感じで。
あのストイックさにはクロードも感心するほどですけど、その反面学生らしいことはあまりしてないというか。
そもそもあの様子じゃ、友達もろくにいなかったんじゃないですかね。
瀬々ちゃん結構ひねくれてるし。
でもそんな彼から友達って言葉が出てきたんすよ。
良かったというか嬉しいというか、ホッとしたというか。
え、親心?やめてくださいよ。
俺まだ独身なんで。
まぁとにかく、瀬々ちゃんはよく頑張ってると思います。
生意気なのが玉に瑕だけど、修行中の三人じゃ一番努力してるんじゃないですかね。
あの年頃の俺なんか、なんとなく過ごしてましたし。
いや贔屓じゃないですって。

もちろん未夜ちゃんもテオくんも、それぞれ努力してるのは理解してるつもりですし、優れたとこを高めつつ、欠けてるとこを補おうとしてるのは知ってますから。
というかぶっちゃけると、これまでの実績からして瀬々ちゃんはぶっちぎりの最下位。
努力が報われてないというか……そもそも彼の異能は特殊系ですし、正直この仕事には向いてないってのが現状という。
あ、今の本人には内緒ですよ?
ああ見えて、結構気にしちゃってるんで。

でもまぁ俺達に限らず
この世界を生きていくなら、やっぱ実力ってもんは大事ですよね。
俺達の世界はそれが顕著に出てるから尚更。
でも俺は、それが全てじゃないと思うんですよ。
もちろん、実力は大事ですけど……
俺達でいうなら情報屋としての精神?
藍猫の社員としての意識っていうかプライド?
そういうのが肝心なことで必要な事だと思うんすよね。

それと違う話になるんですが、俺のデスクに隠してたマカロンが(以下略)


.
< 3 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop